第66回例会『にごりえ』

わが恋は細谷川の丸木橋
わたるにゃ怖し
わたらねばおもふお方に…

福島演劇鑑賞会 第66回例会
劇団文学座
(1971)

原作 樋口ー葉
作 水木洋子
演出 戌井市郎
装置 増山吉彦


例会概要

公演日

1971年9月2日(木) 18:00~

会場

福島市公会堂


ものがたり

 明治二十七、八年日清戦争のころ。

 東京は本郷あたりの新開とよばれる岡場所。金巻という元高職の経営する”菊の井”は戦争景気も手伝って中々繁昌しているが、一枚看板のおりきは近来まれの拾いものと新開一帯の人気者である。はた目には苦労も義理人情もしらぬ、行きぬけのしまりなしと思われているおカの本心は誰にもわからない。

 ほかに亭主持ちのおたか、横浜から流れてきた女郎上りのおてる、上州のダルマ上りで一見小娘風だが実は三十のおとり、元女工で根っからの男好きのおけい等がこの店の抱えで、飯炊きのおなべは六十を過ぎ、口だけは達者だが、身体がいうことをきかない。

 おなべの後釜に元大阪で芸者に出ていたという四十過ぎの女おえんが雇われてくる。一糸乱れぬ身繕い、粋な帯、髪も馳やかに色香をただよわせ金巻始め女達はあっけにとられる。ふれこみとはちがって沢庵石一つろくに持てないが一時は乳母日傘で育ったこともあるおえんはそれなりの衿持がある。だからこそ、目見得の夜、菊の井の主人の無態をきびしくはねつけもするのだ。おえんの頼みは、昔の日那の使用人で今は東京で差配のようなことをしている松田である。おりきにも元旗本の娘という衿持があるのでおえんとは性が合う。おりきの客、結城朝之助は文筆家でおりきに愛情を持ちその心情を小説で発表したりするのだが、おりきは真の愛情などもとめ難いと思っている。

 おりきをおもうこと執念と化し辻車夫から土方人足にまで落ちた源七と、絶ち切れぬ縁に、おりき自身どう処したらよいかわからず悩む。源七は無銭飲食で土地の遊び人に半殺しの目に合う。かけつけた女房のおはつは、離縁だ離縁だとわめく夫と世間の日に耐えている。源七のおりきへの愛はおりきに兇刃を揮うことでしかあらわしようがなかった。

 戦争は風俗取締りが厳しく、年が変って急に新開がさびれ始めた。菊の井の女達は奥様風や令嬢風に変装して客引きに出て行く。おたかは鞍変えを考えている。菊の井の帖場には意外にもおけいがおさまっている。

 そしておえんは暇を出され、台湾に落ちて行くことになった


出演

おえん………………杉村春子

おカ…………………太地喜和子

お照…………………八木昌子

お高 (酌婦)…………矢吹寿子

お鳥 (酌婦)…………神保共子

おケイ (酌婦)………吉野佳子

お初 (源七の妻)……荒木道子

金巻 (菊の井の主人)…龍岡晋

松田 (差配)…………三津田健

源七 (辻車夫)………松枝錦治

結城朝之助 (文士)…川辺久造


スタッフ

効果=秦和夫
衣装=宮内裕
邦楽指導=三升延八重
邦楽指導=三升延珠
舞台監督=鈴本文弥
演出助手=藤原新平
制作=西田辰雄


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