第72回『三人姉妹』

暗い現実の生活と明るい未来への夢
チェーホフの美学と
倫理との融合の作品

福島演劇鑑賞会 第72回例会
劇団民藝
(1972)

作:チェーホフ
演出:宇野重吉

例会概要

公演日

1972年8月24日(木) 18:00~

会場

福島市公会堂


ものがたり

 モスクワで将軍の娘として生まれた二人姉妹は、父親が地方の旅団長に赴任してからは寂しい田舎暮らし。感じやすい心の三人姉妹は、生まれ故郷のモスクワを慕っている。父親が亡くなって一年目、末娘イリーナの誕生日に軍人達が大勢訪れる。

 長女オーリガは女学校教師で、色も恋も胸のうちに骨みこんだまま、オールドミスといわれる年頃になってしまった。

 次女マーシャは、町の中学教師に嫁いだが、楽天的で凡俗な大に愛想がつき、モスクワからきたヴェルシーニン中佐と恋に陥る。

 ヴェルシーニンは、狂気の妻との生活から抜け出ることができず苦しんでいた。

 末娘イリーナは二十才の夢みる年頃、人生の意味を知りたがっている。

 この三人の兄弟アンドレイの妻ナターシャがこの家に入ってから、次第に彼の思うままになり、俗悪さに汚れてゆくが……。

 生活とは、退屈で無意味なものだろうか。イリーナは、新しい生活を夢みるトゥーゼンバハ男爵との結婚を決意するが、トゥーゼンバハは、一方、トゥーゼンバハ爵を慕っていたサリョーヌイと決闘の末、非業の死をとげる。軍隊は町を去ってゆく。後にされた三人姉妹の胸の中に去来するものは……。

 三人姉妹は、ほかの戯曲が多く貴族地主の荘園生活を描いているのに対して、砲兵旅団の駐在する地方のある都市が舞台である。そこの旅団長だった故将軍の娘三人を中心に、そこに集まる軍人たちの生活を描きながら、地方生活のどうにもならない無気力、そのなかから生まれる凡俗さなどを表現する。しかし、チェーホフはそのなかにも、耳を澄まして、人生における信念や希望の動きに、聞き入っているのだ。徒らに陰気な現実を描いて、気分劇や雰囲気劇で満足していたのではない。複雑な気分や思考の凝縮された簡潔なセリフのなかに、くめどもつきぬ深さが秘められている。


出演

オーリガ(長女)……奈良岡朋子

マーシャ(次女)……阪口美奈子

マーシャ(次女)……松本典子

イリーナ(末娘)……樫山文枝

ナターシャ……………草間靖子

トゥーゼンバハ………森雅之

ヴェルシーニン………滝沢修

チュヴトウィキン……清水将夫

サリョーヌイ…………垂水悟郎


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